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東京地方裁判所 昭和36年(ワ)9397号 判決

原告 清水太喜男

右訴訟代理人弁護士 池田清治

被告 愛知製鋼産業株式会社

右代表者代表取締役 飯島毅六

右訴訟代理人弁護士 横地秋二

同 吉田豊

主文

被告は原告に対し三六五、〇〇〇円及びこれに対する昭和三六年一〇月六日から、支払ずみに至る迄年六分の割合による金銭の支払をせよ。

訴訟費用は被告の負担とする。

この判決は仮りに執行することができる。

事実

≪省略≫

理由

一、原告主張事実は、請求原因第二項中各裏書の日を除き、全部被告の自白するところである。

被告は株式会社制作社に対する融通のために本件為替手形の支払を引受けたものであり、同会社は被告に宛て、右為替手形の見返りのため、同金額の約裏手形の一通を振出し、もし右約束手形が不渡となつたときには被告は本件為替手形の支払を拒絶する特約が存在しており、結局同会社において右約束手形の支払を拒絶したため、被告においても本件為替手形の支払を拒絶したものであるところ、原告の直前の前者でありかつ、拒絶証書作成期間経過後の裏書人である佐藤厚は、これを知つて右為替手形を取得したものであるから、被告は佐藤厚に対する右融通手形の抗弁を以て、原告に対抗できると抗弁するが、融通手形とは他人に信用を与える目的で手形行為をした場合をいうのであるから、融通手形行為をしたものは、被融通者から、右融通手形の支払を求められたときには、その支払を拒絶できることは勿論であるが、被融通者以外のものに対しては、そのものが何らかの対価を交付して、右融通手形を取得している以上同人が融通手形なることについて、善意であろうと、悪意であろうと他人に信用を与えた故にこそ、その請求を拒否することはできない道理である。融通手形の見返りのために被融通者に、同金額の手形を振出させ、(いわゆる交換手形)交換手形が不渡となつたときには、融通手形の支払を拒絶する旨、融通者と被融通者との間に特約が存在し、融通手形を取得したものにおいて、右特約及び交換手形が不渡になつたことを知つて取得したとしても、右の道理に変りはない。被告の抗弁はそれ自体理由がない。

二、そうすると被告に対し、本件為替手形金三六五、〇〇〇円及びこれに対する満期の翌日である、昭和三六年一〇月六日から支払ずみに至る迄手形法所定の年六分の割合による利息の支払を求める、原告の本訴請求は正当として認容すべきである。

よつて訴訟費用の負担及び仮執行宣言について、夫々民事訴訟法第八九条及び第一九六条第一項を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 三枝信義)

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